相続で必要となる戸籍は、場合によっては百枚以上にわたる量になることをご存じでしょうか。銀行手続きでは、この戸籍の束を口座がある金融機関ごとに提出しなければなりません。
この戸籍を揃えるだけで、市役所で支払う手数料の金額が数十万になることもあります。相続の手続きって、もっと簡略化できないのでしょうか。
法定相続情報一覧図とは
法定相続情報一覧図は、被相続人の情報を中心に相続人の関係性が分かるように家系図のような図になっています。図では被相続人と相続人だけの情報を記載しており、相続に必要な情報だけがシンプルに記載されています。
どこに住んでいる誰が被相続人とどんな関係なのか一目でわかる仕様になっています。
どこで取得できるの?
法定相続情報一覧図は法務局で取得できます。相続人ならだれでも取得できますが、この図を法務局のフォーマットに従って入力して、出力したものとともに必要な住民票や戸籍をつけて提出します。法務局では、申請内容を確認して内容に問題がなければ一覧図を公の証明書として交付してくれます。
法務局で確認した内容に問題がある時には、修正の指示の連絡が入るため、都度対応が必要になります。さらに、被相続人が高齢の方だと、法定相続一覧図に記載する戸籍もかなり古いものを取り寄せなければならないことがあります。一般の人の知識だけで情報を収集できないケースも出てきます。
(戸籍が保管期限を経過して廃棄されていたり、改製に伴い、削除されていることもあるのです)作成にはかなり手間と時間がかかりますので、法定相続情報一覧図の申請は弁護士や司法書士、行政書士など専門家に依頼されることをお勧めします。
また、作成後5年間は無料で何度でも無料で交付してもらえます。ただし、他の相続人には交付できないため、その際には新たに同じような申請をします。
どんな時に便利なの?
法定相続情報は相続人が多い時に非常に便利です。また、相続の手続きを行う機関が多い場合にもお勧めです。例えば、
- 被相続人の方が多数の金融機関に口座を持っている
- 保険契約がある
- 登記やその他複数の手続きがある
そんな時に戸籍の束をその都度持っていく必要がありましたが、法定相続情報一覧図を使うことにより、必要書類がぐんと減ります。
相続で法定相続情報一覧図を使うときの注意点
実は法定相続情報一覧図は2017年から運用されています。比較的最近の制度であるため、金融機関や窓口の方が知らない場合があります。私も「これは証明書にはなりません」と何度かいわれたことがあります。
ほとんどの場合、粘り強く説明をすると、担当者が専門部署に問い合わせてくれて手続きができました。できれば、手続きの前に金融機関に戸籍の代わりに法定相続情報一覧図を持参したいと伝えておいたほうが手続きはスムースです。なお、大手の金融機関などでは周知されているので、すぐにわかってもらえました。
技術の進歩で手続きが簡略化するのか
今もなお、すごいスピードで進化し続けているITの世界です。専門家の手にゆだねないと手に負えないような手続きもどんどん簡略化されていくのでしょうか。
法定相続情報一覧図も作成の段階で、戸籍を全部取得しなければならず、まだまだ手続きには手間を要します。それでも今までよりは少し手続きが楽になりました。私たちだけでなく、法律の専門家もまた情報に置いて行かれることがないように常に自分をアップデートしていく必要がありますよね。
ではまた!
参考にしたサイト
新しい相続手続「法定相続情報証明制度」とは(日本司法書士連合会HP)https://www.shiho-shoshi.or.jp/html/hoteisozoku/
法定相続情報証明制度の具体的な手続について(法務局HP)https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html
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